二月末に行われた米朝首脳会談は、非核化に向けた具体的方策に関する合意を得ることができず終了しました。その後三月七日、米シンクタンクは、第一回米朝首脳会談後に解体が始まっていた「東倉里ミサイル発射場」が、通常稼働状態に戻っていると分析しました。トランプ大統領も「(事実であれば)金委員長に対し、非常に失望するだろう」と発言した旨が報じられました。
北朝鮮西側にある東倉里は一九九八年にテポドン一号を発射した舞水端里(東側)に続く第二の発射場として作られました。衛星で発射準備が確認できる燃料注入作業を、地下化する等、近代化されています。北朝鮮は、ここを「西海衛星発射場」と呼び、あくまでも人工衛星用ロケット発射場と主張しています。戦時にはタワーが最初に破壊されますからミサイル発射試験場ということでしょう。
東倉里からは、過去三回ミサイルが発射され、一回目は二〇一二年四月、国際海事機関に正式に通知し、韓国西方沖とルソン島東方沖の二か所に落下地点の警報を出しました。しかし人工衛星と称する「光明星三号」を載せた「銀河三号」ロケットは発射二分後に空中分解し失敗しました。二回目は同年十二月、同じ手続きの後「銀河三号」を発射し「光明星三号」と称する物体を地球周回軌道に投入しました。三回目は二〇一六年二月、「光明星」称するロケットを発射しました。
当時、一回目は、事実上の弾道ミサイルであり、「北朝鮮のロケットの開発・発射の停止を要求する安保理決議」に違反するとして、国際社会は中止を要求。しかし北朝鮮は、人工衛星と主張し「平等な宇宙の平和利用を約束する宇宙条約が安保理決議に優先する」と応じませんでした。 また二回目の発射後は、追加制裁として、安保理決議二〇八七が採択されましたが、またも人工衛星と主張。三回目も国際社会は決議違反と反対しました。
今後、金正恩が「人工衛星」と称して新たなミサイルを東倉里から発射するのか、三度目の米朝首脳会談開催に向けたブラフなのかはわかりません。しかし緊張を高めることで交渉相手に譲歩を迫る「瀬戸際外交」は何も変わっていないというだけは言えるのです。 |