第17回宝島社『このミステリーがすごい!』大賞の「U-NEXT・カンテレ賞」を受賞した「名もなき復讐者 ZEGEN」登美丘丈著書(宝島社)の出版記念祝賀会が8月30日、大阪市中央区の道頓堀ホテルで開催されました。
発起人に西村ひかる大阪府議会議員、三宅達也堺市議会議長、西尾功一堺登美丘ライオンズクラブ会長、加藤均特定非営利活動法人堺国際交流協会理事長ら地元有力者が多数、盛大に行われました。
「名もなき復讐者 ZEGEN」はカンテレで連続ドラマ化(8月29日㈭スタート、0時25分~0時55分、全8回、主演 阿部進之介)され、御覧になられたかたも多いはず。
この作品は、外国人の就労問題をひとつの焦点に、一人の男の復讐劇、裏社会を取り巻く人間模様をクローズアップしています。
作品標題の一部にZEGEN(ゼゲン)というローマ字が使われていますが、日本語にすれば「女衒」(ぜげん)となり、辞書などによれば、江戸時代に普通の街中の女性を遊女屋に売りとばす生業にしていた人物と記されています。
遊郭が法律上、存在しなくなっている現代においても、現実的には昔の女郎屋に似た機能を果たす業者も潜在的に存在しているようで、その意味では、この「ZEGEN」という言語を題名に使った文学作品は、それなりの現代的世相の一面を注目させていて、高く評価されるべき役割を果たしているとみられるようです。
もう一つ、この作品で注目したいのは、執筆者が「登美丘 丈(とみおか じょう)」という筆名(ペンネーム)を用いていることであります。
同氏は一九六九年生まれ、堺市の出身、大阪市在住と記されておりますが、想像するかぎりでは、このペンネームは「登美丘」という既存の地名を使用している点で、現実的には、この堺市内の戦前からの地名とかなり関連のある人物ではないかと考えられるのであります。
この登美丘は昔から北野田と言われていた。中学校、高校もあり、駅前から大美野という高級住宅地として知られてきました。それゆえに現在でも、南海電鉄高野線では「北野田駅」という駅名を変えずに使い続けています。
私が少しこだわっているのは、この古くからの北野田の地に、戦前から現在でもその筆名が知られている「織田作之助」が在住した。「おださく」の住居も今では無関係な人のものとなっていますが、当時のまま存在しております。
北野田駅を下車、西側の大美野住宅地へ向かう道を右手に、相互銀行があった角地を右に入ると、以前に魚屋さんだった左手の2階建住居が戦前のまま残っています。
私は、今でも戦時中、結核を患っていた織田作之助さんが応召されず、ある日の夕方、二階の窓越しにくわえ煙草で、一時を楽しんでいた浴衣姿の「オダサクさん」を忘れることができません。「名もなき復讐者 ZEGEN」を読んでそんなことも考えました。
元産経新聞副社長
政治経済評論家 佐藤一段
名もなき復讐者 ZEGEN
登美丘 丈 著
宝島社文庫
680円(税別)
全国書店で発売中 |