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葛󠄀村会頭の先祖は堺商工会議所の設立に参画した
十代目が堺商工会議所の新会頭

対談 堺商工会議所  葛村和正会頭
日越堺友好協会 加藤 均理事長
堺商工会議所が一四〇周年を迎え、在堺チェコ共和国名誉領事館も、堺市北区の同会議所ビル内に開所するという祝事が重なりました。この機会に〝堺の明日〟について、同会議所の葛村和正会議所会頭(株式会社ダイネツ 代表取締役会長)と、会議所議員を長年にわたり務める加藤均・日越堺友好協会理事長(株式会社加藤均総合事務所代表取締役会長)で対談、司会は佐藤一段・元産経新聞副代表・経済部長で大いに語り合った。
堺商工会議所  葛村和正会頭
堺商工会議所 葛村和正会頭

会員のニーズに
応える提案力を磨け!

佐藤  伝統ある堺商工会議所の会頭ご就任、おめでとうございます。まずは会頭、一言お願いします。

葛村

 言うまでもなく、皆さんご存知のように、我々は、東京、大阪、神戸についで堺。という、全国で四番目にできた歴史と伝統のある商工会議所でして、それだけに、底力のある堺の商工会議所商工業者のために、リードとバックアップでサポートしたい。
 とくに私は今期も会頭として引き続き選任されましたので、一層堺のために動く覚悟です。
佐藤
 会議所議員キャリアの長い加藤さんは、いかかですか。
加藤
 今後もがんばって、いろいろと改革をしていただきたいと期待しております。
佐藤  かねて期待の人の登場ということでしょうから…。

葛村  設立一四〇周年ということで、掘り返してみようと「一〇〇年史」を見てみました。すると一四〇年前の創立のときの発起人のメンバーに、何と私ども「ダイネツ」の前身である「葛󠄀籠屋(つづらや)」経営者の高祖父の名前が入っていたんです。
 現在の熱処理加工会社(ダイネツ)の前身ですね。堺の錦之町にあった…。
 私は葛󠄀籠屋(つづらや)からいうと、十代目です。そういう新しい時代の創世記に、新しい意欲があったのですから、私もそれを受けついで堺のためにがんばらないと…。
佐藤  古きを温めて、新しきを知る―といわれます。

葛村  私は、これまで9年間、副会頭をしておりましたが、新会頭として会議所の魅力を、大いに理解してもらう努力をしていこうと心がけます。
 会員は増やしたい。しかしメリット(値打ち)として、どんな魅力があるのか?と問われます。
 セミナーは年に50回もやっているけれど、果たしてどれだけお役にたてているのか?
 会員にとって、年会費に値打ちがあると思えるか?
 時代は、どんどん変わってゆく。そのニーズに応じているか。
 私は、会議所の職員に、提案力を磨くことを求めている。
 時代のニーズに、常に応えてリードして行くパワーを磨いてほしい。
佐藤  堺では、百舌鳥古市古墳群の世界遺産登録のとき、大きな盛り上がりをみせました。これも一過性ではいけません。次のステップに、何が必要か。

分業の仕組みを活用する
堺のメーカーの史的遺産

葛村  先日も、世界遺産登録を機にメイドイン堺の「自転車タクシー」が登場してきた。これにも注目したい。堺から発信する〝電動自転車〟です。
 また、私が提案しているのは、堺の湾岸部に未利用地があります。ここに実物大の仁徳天皇御陵のレプリカをつくる案です。
 石などを敷きつめ、埴輪(はにわ)を並べたら、なんとなくムードがわかる。海外からの観光者には関心をもっていただける、かつ正しく、理解されるだろう。世界遺産登録を絶好の契機と捉え、堺の認知度を高め、都市魅力を発信していくことが重要だと考えている。
加藤  今の話、なかなかおもしろいと思います。委員会をつくって、調査をされてはどうでしょうか。
葛村  もともと堺の人は、チャンスを大切にした。鉄砲伝来の時でも、十年ぐらいの間に、30万丁をつくれるほどの力をつけていた。
 それは分業の仕組み、焼き入れ、切削、加工など、すべて分業して、アッセンブルして行く工程の合理化を自らで開発して行ったから。
(次頁へ続く)

社説

食料自給率向上は諸外国にとっても必要?

元海上自衛隊呉地方総監
金沢工業大学虎ノ門大学院 教授

伊 藤 俊 幸

 十月からTOKYO FMで、筆者がパーソナリティを務める番組「Think Japan」(毎週日曜七時三十分)が始まりました。私たちが(安心・安全で持続性ある豊かな生活)を維持していくにはどうしたらいいかをリスナーの皆様と一緒に考えていく番組です。これまで、「北極の氷」「水」「子供の防犯」「少子化」など多岐にわたるテーマを取り上げてきました。
 その中で、筆者が特に「日本が早急に対応しなければ世界が大変なことになる」と痛感したのは「水」の問題です。水は人が生きるために必要不可欠な上、安価で重い物質です。つまり他国に運ぶことが困難な地域限定的資源なのです。
 「二十世紀の戦争が石油を巡る戦いだったとすれば、二十一世紀は水を巡る争いになる。」これは一九九五年当時、世界銀行副総裁だったイスマル・セラゲルディン氏の発言ですが、これが現実化しているのです。自衛隊が二〇一三年までPKO部隊を派遣していたゴラン高原は、今やヨルダン川の水資源を巡り隣接する国々が争う係争の地になってしまったのです。
 国連も「二〇三〇年には、世界中に必要な水は半分になる」と警鐘を鳴らしています。世界人口七六億人のうち、今も五億人が慢性的な水不足に直面しており、二十四億人が必要な水が十分に使えない、いわゆる「水ストレス」の状態にあるのです。
 ところが日本は、国内の水は四分の一しか使用していない一方で、世界最大の水輸入国になっているのです。輸入しているのは、バーチャル・ウォーター(仮想水)といわれるものです。食料や畜産物を輸入する消費国が、自国でそれらを生産した場合、どれくらいの水が必要だったか換算したものです。
 日本は食料自給率三七%で、六〇%以上の食料が輸入されており、その量は年間五八〇〇万トンに上ります。一トンの穀物を作るためには一〇〇〇トン以上の水が必要とされますから、ざっと一二〇〇億トン以上の外国の水が毎年日本のために使われていることになるのです。
 食料自給率の向上は、これまでも食料安全保障の観点から議論されてきましたが、国際社会に対する影響、という側面からも至急対応しなければならない問題なのです。