次へ

堺の歴史ストーリーを

活かしたまちづくりを

加 藤 均 恒例 新春放談
東京オリンピックイヤーである2020年。昨年の百舌鳥・古市古墳群のユネスコ世界遺産登録で大いに盛り上がった堺市も新しい顔でスタートする。就任後、初めての新年を迎えた永藤英機市長と、特定非営利活動法人 日越堺友好協会の加藤均理事長との新春恒例対談が行われた。司会は佐藤一段 政治経済評論家が務めた。
永藤英機堺市長(左)と加藤均日越堺友好協会理事長(右)
永藤英機堺市長(左)と加藤均日越堺友好協会理事長(右)

永藤英機 堺市長
「若い力」で市政をリード

佐藤  新年おめでとうございます。お名刺をいただきました永藤英機市長さんの姓には「藤」という字がついておられます。加藤さんにも「藤」の字があり、なんと私まで佐藤でやはり「藤」にはご縁があります。3人ともども、なんとなく歴史上、知られる藤原氏の流れを少しでも汲んでいるのではないかと考えていました。大袈裟で軽い話でこの新春対談を聞かせていただきます。

永藤

 新しく市長に就任して日は浅いですが、市民の立場に立って、皆さんの思いをくみながら精一杯がんばってまいりたいと存じます。
佐藤
 学校を出られてからお勤めでしたか。
永藤
 大阪府立大学を卒業して、システムエンジニアとして勤めておりました。

佐藤  その後、大阪府議会議員を6年間務められました。その後、堺市長ご就任ということで地方自治の仕事に邁進しておられます。
加藤 新しい市長になって、若手ですから。市長にはずっと役人が続いたんです。堺の市長として初の民間人ですから、しっかり頑張っていただきたいという大きな希望を持っております。
佐藤  堺市長ご就任初の新年を迎えて、抱負と展望をお願いします。

永藤  堺市民のプラスになるよう、大阪府、また、大阪市との連携を進めていく。街の玄関口として堺東の開発を進めて堺全体の活性化を。世界遺産となった百舌鳥・古市古墳群 仁徳天皇陵を基にしたまちづくりなど、多くのビジョンを持っています。

人事交流も進める
市長と会議所会頭の連携強化

加藤  堺商工会議所の会頭に葛村和正氏が就任されました。2人でタッグを組んで色々なことに取り組んでいただくと堺の将来が明るくなると思います。
永藤  経済も政治も両輪ですから、両方がうまくかみ合うことが重要だと思います。

加藤  商工会議所と役所がもっと一体になっていろいろやられるといいと思います。いろんな事業がありますから、やっぱり両方力を合わせたほうがより効果が上がるというのが私の考えです。
永藤  そうですね、方向性を共有しておかないと。行政でも税収はとても大きな歳入源です。固定資産税や法人税がありますが、企業さん側に活躍していただけないと収入も減ります。会議所との連携はどんどんと進めていきたいと思います。
加藤  市の職員の方にもっといろんなところ、広く見てもらうことも大切だと思います。例えば商工会議所とも活発な人事交流をするとか。ベトナムの日本大使館に三等書記官という名称を持っている方々がいて、その人たちはいろんな都道府県や一般の保険会社から出向で来たりして、書記官で2年か3年勉強に来てるんです。堺でもそのような制度も取り入れても良いと思います。
永藤  今、市の職員で1人外務省に出向しています。やはり広い視野で見なくては。どうしても堺だけで考えると可能性を活かし切れない点もあると思います。特にASEANとのつながりであったり、友好姉妹都市も多いので、できればいろんな視野を持って、それを業務の中で活かしてもらえたらよりいい街になると思うんです。
加藤  私は現役の時代、実現できなかったんですが、区がありますよね。堺市というのが都道府県のレベルの仕事をするところで、区というのは市の役割をするところです。各区がそれぞれ特徴を持たなければいけないわけです。そこで私は区長に特別な予算を与えて、それはその区の特徴を出すための予算ということで出してほしいと言ったことがあります。7区ある区が特徴を持てるよう、もっと新しいことを区長に考えてもらうというようなことを、ぜひやっていただけたらと思っております。
(次頁へ続く)


社説

自衛隊の災害派遣を考える

元海上自衛隊呉地方総監
金沢工業大学虎ノ門大学院 教授

伊 藤 俊 幸

 新年おめでとうございます。昨年の漢字一文字は「令」が選ばれました。新しい元号の「令和」の時代に明るい未来を願う国民の思いが集約されているように思ったのは、筆者だけではなかったと思います。
 その一方で、昨年は大規模自然災害により「避難命令」が頻繁に出された年でもあり、災害派遣活動をする自衛官の姿をよく見る年でもありました。
 国防を主たる任務とする自衛隊が、余力で対処すべきだった災害派遣を「主任務の一つ」に変更したのは、阪神淡路大震災直後に策定した「〇七防衛大綱」でした。「我が国防衛」に加え、「大規模災害等各種事態への対応」と「より安定した安全保障環境の構築への貢献」が防衛力の役割として初めて規定されたのです。
 現在では大規模災害などに備え、自衛隊では常時待機態勢がとられています。陸自は初動対処部隊(約三九〇〇名)、海自は艦艇(各地方総監部一隻)、空自は航空救難及び緊急輸送機(十~二十機)などが待機しており、「FAST―FORCE」と呼んでいます。FASTとは、First「発災時の初動」、Action「迅速に被害を収拾、人命救助」、Support「自治体等への支援」、Force「実施する部隊」の頭文字です。「自己完結性」が高い自衛隊は、機動的に動くことができる災害への初動対処に最適な組織なのです。
 主任務となった災害派遣に対応するため、「緊急性」「公共性」「非代替性」の三つの判断基準を自衛隊では定めています。中でも「非代替性」は、派遣時よりも撤収時の大きな判断材料となっています。災害発生時は、七二時間以内の人命救助に全力を傾け「初動全力」で自衛隊は活動しますが、長い期間活動し続けると、これを生業としている民業への圧迫になるからです。
 異常気象ともいうべき事態が何度も発生し、日本は災害列島になってしまっています。部隊指揮官たちはその派遣と撤収の判断に常に悩みながら、「人の役に立ちたい」との一心で懸命に活動しています。この年末年始休暇期間にも海外や海上・航空で実任務に従事し、また待機態勢をとるため部隊で過ごしている多くの自衛官がいるのです。