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新生活に潜む脅威

食中毒の危険性
試されるコロナの教訓

 「テレワーク」、「ソーシャルディスタンス」など、新型コロナウイルス感染症により、見慣れない言葉を目にする機会が多くなった。中でも飲食店においては、「テイクアウト」や「デリバリー」という言葉は、いまや町を歩けば見ないことはないほどである。これに伴い、次の脅威になると考えられることは食中毒の危険性である。幸いにも、コロナウイルスによる飲食店の休業や外出自粛、または人々の防疫意識の高まりからか、今年度、大阪府内の3~4月の食中毒の患者数は、令和元年3月が240人、同年4月が173人であったのに対して、本年3月が21人、同年4月が0人と、前年比で大幅に減少している。しかし、気温が上昇する季節に入り、普段は「テイクアウト」などを行っていなかった飲食店に対して厳格な衛生管理が懸念される声もある。例年、7月から8月は食中毒の患者数が増加する傾向にある。緊急事態宣言が解除され、新生活様式が叫ばれる中、「テイクアウト」、「デリバリー」を含めた飲食店の利用や家庭での衛生管理に関して、コロナウイルスから得た教訓でもある防疫意識を再確認するべきではないだろうか。

 食中毒は、細菌性、ウイルス性、自然毒、化学性、寄生虫によるものに分類され、主な原因となるのは、ウイルス性のノロウイルス、細菌性の食中毒の中には、カンピロバクターやサルモネラ、黄色ブドウ球菌が原因となることが多く、食肉及びペットなどから汚染された食品や飲料水、また、弁当やおにぎり、生菓子類といったものが原因となる。予防の3原則は、①細菌をつけない、②細菌を増やさない、③細菌をやっつけること。調理場や調理器具の衛生管理を徹底し、食品の期限や保存方法を確認し、調理後できるだけ早く食べること。また、しっかりと加熱を行うことで細菌を死滅させることも重要である。堺市食品衛生課の職員は、「何よりもまず手洗いをしっかりと行ってください。また、弁当とは異なり、いわゆる『テイクアウト』の食品は、温かいまま食べることを前提として提供されているものです。常温での長時間保存を避けるなど、食品はできる限り早く食べることが予防に重要です」と注意を促す。
 食中毒に関する相談は堺市食品衛生課(電話番号 072―222―9925)まで。


熱中症にご注意を!

堺市消防局

【予防が一番大切】
 毎年、多くの方が救急搬送される熱中症。熱中症は命を失うこともある危険な病気ですが、しっかりと対策を徹底することで防ぐことができます。
 最も有効なのは、暑さを避けること。
 気温が上昇する時間帯の外出は避け、室内は空調機器などを使い温度管理をしっかりと行いましょう。さらに、のどが渇いたと感じる前に早めの水分補給をすること、普段から栄養バランスのとれた食事を心がけること、暑さに負けない体力づくりなども大切です。体温調整がしづらいご高齢の方や小さなお子さんは特に注意が必要です。
 また、今年は、新型コロナウイルスの感染予防と熱中症予防の両立が大事です。
 マスクを着けているときは、強い負荷の作業や運動は避け、こまめな水分補給を心がけましょう。周囲の人との距離を十分にとれる場所で、マスクを一時的にはずして休憩することも必要です。 
【熱中症になった時は】
 気温や湿度が高いところで体調不良を起こした人がいたら、まずは声をかけてあげてください。もし、呼びかけに反応がなければ、直ちに119番通報をして救急車を要請し、涼しい場所に避難させ、救急車を待ってください。首や脇、太ももの付け根などを冷やすことも有効です。
 意識がしっかりしている場合は、まずは涼しい場所へ避難させ、水分や塩分を補給しながら様子をみましょう。それでも、症状が改善しない場合は、医療機関を受診してください。 
【判断に迷ったら】
熱中症を疑う症状があり、意識障害(受け答えや会話がおかしい、呼びかけに反応がないなど)があれば、急いで救急車を要請してください。
 判断に迷った場合は「救急安心センターおおさか」(電話番号 ♯7119または06―6582―7119)にご相談ください。医師の管理体制の下、看護師が24時間365日体制で相談に応じます。
 熱中症をしっかりと防ぎ、楽しい夏を過ごしましょう!


社説

アメリカの政軍関係を考える

元海上自衛隊呉地方総監
金沢工業大学虎ノ門大学院 教授

伊 藤 俊 幸

 黒人男性フロイド氏の死亡事件をきっかけに全米で大規模な抗議運動が巻き起こったことはご承知の通りです。
 抗議運動の初期に略奪や暴力行為が発生したことから、トランプ大統領は各州知事に対し「支配せよ」と号令、「州兵」だけでは鎮圧できないと思ったのか「(連邦)軍を投入する」と発言しました。
 これに対しマティス前国防長官は「約五十年前軍に入った時、私は憲法を支持し擁護するとの宣誓をおこなった。同じ宣誓をした部隊が、いかなる状況であっても同胞市民たちの憲法上の権利を侵害する命令を受けようなどとは夢にも思ったことはない」とトランプ大統領を非難したのです。その後も元米軍大将による政権批判が続きました。
 日本では、シビリアンコントロール上「大統領の命令を軍が聞くのは当然」とマティス氏を非難する発言がありましたが、そうではないのです。
 まず米軍では、歴史的背景から米国民に対して絶対に武器を向けないと徹底的に教育されているのです。「米陸軍を動かすためには関連法令が、この部屋の壁一面に並ぶほどある。海軍はこの一冊だけどね。」「南北戦争の反省から米陸軍は二度と米国民に銃をむけない。」二十年前、在米防衛駐在官だった筆者に、米軍の知人が言ったことを思い出します。
 また「文明の衝突」で有名なサミュエル・ハンチントン博士は、軍人の責務には三つあるとして、文民指導者(大統領)の命令を実行する「執行機能」だけでなく、「代表機能」と「助言機能」が同等に重要であると指摘しています。
 「代表機能」とは、「国家の軍事的安全保障上、何が必要であるか」を国家において代表する機能。「助言機能」とは国家の意思決定に際して、各選択肢がもたらす影響を軍事的観点から分析し報告する機能です。
 つまり軍人は、単に大統領から命ぜられたことを実行するだけの存在ではなく、軍事分野のプロとして「国家国民を代表して意見具申」し、大統領が間違っていたら「意思決定を覆させる存在」なのです。そしてそれでも受け入れられなければ、職を賭して訴える。これが軍高官(将官)の国家に対する責務とされているのです。