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未来につながる
堺のビジョン

加藤均 市長と語る
 2021年、ウィズコロナ、アフターコロナの時代へ新たなビジョンを描きながら市政を進める永藤市長。昨年は新型コロナウイルス感染拡大により社会が大きく変化。こんな時だからこそ未来を見据えた新たな感性で行政を担っていく必要がある。2021年には東京オリンピック・パラリンピックの開催が予定されており、2025年には大阪・関西万博の開催が決定している。変化の大きな波が到来する中、堺の未来の舵を取る永藤英機堺市長と、認定特定非営利活動法人 日越堺友好協会の加藤均理事長との新春恒例対談が行われた。司会は堺市在住の大平睦美 京都産業大学教授が務めた。
「堺の未来を語る」永藤英機堺市長(中央)、日越堺友好協会 加藤均理事長(右)、京都産業大学 大平睦美教授(左)
「堺の未来を語る」永藤英機堺市長(中央)、日越堺友好協会 加藤均理事長(右)、京都産業大学 大平睦美教授(左)
大平  新年おめでとうございます。2020年が大変異例な年になってしまったということで、これまでの計画が変わってしまったこともあると思うのですが、それは全てコロナが原因になるのか。突き詰めていくとそうなってしまうのだと思うのですが、このたびは新春ということで少し明るい話題を伺いたいなと思い、これから10年後、2031年の堺について、市長がどのようなビジョンを持っておいでなのかということを中心に伺っていきたいと考えています。
 2031年と申しますと、オリンピック・パラリンピックが終わり、大阪では2025年の万博も終わっている。今は始まる前ですから、期待でわくわくしている気持ちが多いのですが、それが終わった後、堺はどのようなビジョンを持って発展していくのでしょうか。
永藤

 まず、そのときの堺に求められるものは、やはり未来のわくわく感だと思っています。この堺は、本当に歴史にあふれたまちでして、一昨年には百舌鳥・古市古墳群が世界遺産に登録されました。環濠エリアでは、中世黄金の日々と呼ばれた堺がありました。古代から培われた金属加工の技術は、近世に鉄砲や刃物などの産業を生み出し、近代に入ると国内初の私鉄である阪堺鉄道が開通するなど交通網が発達し、商工業の要地として、自転車や繊維などの産業も発展しました。
 日本の歴史を見ても、この類い稀な歴史を持つのは堺の強みだと思っております。
 一方で、市民の皆さんがわくわくする未来を描けているだろうか。10年後の堺、どうだろうかというと、私は少しその部分が弱いかなと思っていました。
 ですから、市長に就任した際に、これからのビジョンを描く上で幾つかのターニングポイントを設定しました。
 まず、一つは、2025年の大阪・関西万博です。そして、もう一つは、SDGsの目標年である2030年。誰一人取り残さない社会をめざして、国連に加盟する世界の国々が協力して、目標の達成に向かって進んでいこうというもので、17のゴール、169のターゲットが示されています。日本政府ももちろんそれに賛同し、堺市は、2018年に国内で最も早く、「SDGs未来都市」に選ばれました。ですから、これは国連の目標、日本の目標としても、堺市としても姿勢を示しながら進んでいきたい。
 そして、2040年。これは堺市役所がある堺東駅が連続立体交差、高架化されるということ。このタイミングこそ、まちが大きく変わる転機になると思いました。そこで、若手中堅職員を中心に策定した「堺グランドデザイン2040」を掲げ、20年後の堺の姿を思い描き、そこから今、何ができるかということを考えていこうというところで、各エリアの目標、未来のビジョンを示しました。
 今、一番近い目標としては、2025年の大阪・関西万博。そこまでにこのグランドデザインで示した内容、スマートシティや環濠エリアの活性化など様々なチャレンジをして、2025年を一つの大きなポイントとして、そして次のターニングポイントである2030年に向かって飛躍、実践していくことを考えています。
(次頁へ続く)


社説

新年にあたりトランプ後を考える

元海上自衛隊呉地方総監
金沢工業大学虎ノ門大学院 教授

伊 藤 俊 幸

 新年おめでとうございます。三密を避け、マスクと手洗いによる自己防護を徹底された静かな年末年始をお過ごしのことと思います。そして今年こそ新型コロナウイルスを克服し、日本中が笑顔あふれる明るい年になることを、お祈りされたことでしょう。
 さて、国際社会に目を転じてみると、今年はトランプ大統領の退陣により、新たな指導者による米国の姿をよく観察すべき年になるといえましょう。
 トランプ大統領は、「私は米国の大統領であって、地球の大統領ではない」として、米国第一主義を公言。特に厳しい対中経済政策によって、米中新冷戦の様相を呈していることは皆さまもご承知の通りです。尖閣諸島での中国公船の動きなど、「中国の横暴ぶりを止められるのは彼しかいない」という期待なのか、トランプ大統領の敗北を認めない人々が、日本にもいる状況です。
 しかし、米国国内では、保守もリベラルも両極端な意見が表面化し、眼に見える形での分断が生まれました。トランプ大統領の四年間が、米国のダークサイドを顕在化させてしまったのです。
 また同盟国にも対しても「もっと金を払え」と厳しい態度で迫るなど、国際社会の分断を招きかねなかったのも事実です。国際協調の上に繁栄を享受する日本にとっては、良い面と悪い面の両方があった米国大統領だったのです。
 一方、バイデン次期大統領は、これを撤回し多国間主義に回帰することは間違いないでしょう。世界保健機関(WHO)の脱退撤回、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」への復帰など、シンボリックな意味での国際協調路線が表明されることになるでしょう。
 しかし、「地球の大統領」を演じることは難しいのだと思います。日本以上に新型コロナウイルスが猛威を振るう米国では、国民へのワクチンの素早い供給やコロナ不況対策など、内政に忙殺されるのは必定です。そもそも、「米国は世界の警察官ではない」と最初に言及したのは、民主党のオバマ大統領なのです。
 日米同盟は、これからも日本の外交・安全保障政策の基軸ですが、日本としては、自らできることは自らする、「我何をするべきか」と自問し行動する必要があるのです。