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ひっ迫する医療現場
迫られる清掃業者の選択と現状

感染対策を踏まえた病院清掃
感染対策を踏まえた病院清掃

 コロナ禍を引き継ぎ、迎えた令和3年。新年には早期収束を願う声も多かった。一方で、首都圏をはじめとした大阪や兵庫などの都市部では、緊急事態宣言が発令されるなど現下の情勢は厳しい。これに伴って、日々危殆に瀕する医療現場では、清掃業者が第一線に入れず、看護師など医療関係者が病室のごみ処理やトイレの清掃までを行っている現状がある。厚生労働省の依頼により全国ビルメンテナンス協会が、病院清掃を行う加入事業者に行ったアンケートによれば、コロナ患者が入院する病棟等の清掃に対応できるかといった質問に対して、全国約1000社のうち未回答が4割、対応可能と答えたのはわずか88社であった。なぜ、清掃業者の対応は進まないのか。

コロナに対応
88/1000社

病院の清掃・メンテナンスを行う株式会社加藤均総合事務所(本社・堺市)の池本一哉部長は、「業者としては、いわゆるレッドゾーン(危険地帯)に入って手伝いたい気持ちもあるが、国の補償が定まっていない中では、なかなか動くことが難しい。従業員には高齢者も多く、看護師などの医療従事者とは給料も異なる。清掃業者に対する特別手当のようなものもない中、どうして命のリスクを個人に抱えさせてまで病院に行けと言えるのか。また、現場では防護服の着用が必須となっているが、この着脱は非常に感染リスクが高く、プロの看護師でさえミスを起こしかねないと言われている。現在は、医師や看護師の指導の下、2人体制で着脱を行っているが、こうした感染予防のノウハウは未だ浸透していない。『感染しない、感染させない』が最優先である中、清掃業者がクラスターを起こしてしまっては元も子もないだろう。肝心な補償については、現状、国からの補助金は病院に対して支給されているものの、直接清掃業者に支給されているものはない。国が直接、清掃業者に対して委託する体制をとらなければ、このアンケートが示す数字が好転することはないだろう」と厳しい現状を話す。

コロナ禍を乗り越え
社会に貢献

また、同社加藤浩輔社長(大阪ビルメンテナンス協会副会長)は、「日本の医療は世界に誇るものだが、コロナ禍により医療崩壊間近との声もある。我が社としても、『コロナ禍を乗り越え、社会に貢献しよう』というスローガンの下、社会貢献を何よりとして医療業界を支えていきたい。エッセンシャルワーカーの一員としての自覚を持ち、何とか対応していきたい気持ちはあるが、前提にあるのは従業員及びその家族の安全。現状では危険な業務は受けられない。従業員の中には、少しでも力になることができればと現場での作業を望む方もいるが、家族のことを考えれば難しい。現在、全国ビルメンテナンス協会では、医療機関を現場としている事業者における従事者の確保と、安全性の担保、不安の解消を図るために、事業者に対する金銭的支援や衛生用品の支給など、具体的な改善要望を国に訴えている。今後の国の体制整備に期待したい」と述べる。



陸上自衛隊
信太山駐屯地司令 訪問

東 直史司令(左)と加藤均会長
東 直史司令(左)と加藤均会長

 陸上自衛隊 第37普通科連隊長兼信太山駐屯地司令 東直史1等陸佐(令和2年12月22日着任)が1月15日に来堺、護衛艦いせ・潜水艦救難艦ちはや後援会の加藤均会長を表敬訪問、就任の挨拶を行った。今後の支援や協力について意見が交わされた。


社説

心配な朝鮮半島情勢

元海上自衛隊呉地方総監
金沢工業大学虎ノ門大学院 教授

伊 藤 俊 幸

 年明け早々緊急事態宣言が発令され、新型コロナの猛威に見舞われる中、日本の安全保障上重要な朝鮮半島も心配な情勢にあります。
 まず北朝鮮では、一月五日から第八回朝鮮労働党大会が行われました。同大会で金正恩は、金日成・金正日と同じ党総書記に選出されましたが、自ら新たに創設した党委員長というポストを捨て、過去の権威に依存したように見えました。彼の権力低下を感じたのはおそらく筆者だけではないでしょう。
 九時間にわたる演説では、アメリカのバイデン新政権についての発言が注目されましたが、「最大の敵であるアメリカを制圧し、屈服させる」と対決姿勢を示し、「核兵器の小型・軽量化や超大型の核弾頭の生産を進める」と強調しました。
 特に筆者は「全党と全人民を並進路線貫徹に引き込んでいく」との発言に注目しました。「並進路線」とは、「核建設と経済建設を並行して進める」という国家方針でしたが、トランプとの対話モードに転じる際、「核建設はもう完成した」「これからは経済建設に専念する」と修正したものでした。それを再び戻すと言ったのです。
 つまり、バイデン政権の北朝鮮政策を見極めた上で、新たな核実験や弾道ミサイル発射実験など再び挑発してくる可能性が十分あるということなのです。
 一方韓国では、元慰安婦十二人が日本政府を相手に起こした損害賠償訴訟で、ソウル中央地裁は、原告一人あたり一億ウオン(約九五〇万円)の支払いを命じる判決を下しました。
 慰安婦問題については、一九六五年の日韓請求権協定と二〇一五年の日韓合意で「完全かつ最終的に解決済み」というのが日本政府の立場です。韓国政府が要求した合計五億ドルを日本政府が供与する形で、請求権に関する問題は、「いかなる主張もできない」と定めてあるからです。
 そもそも主権国家は他国の裁判に服する必要はありません。菅総理が「断じて受け入れることはできない」と猛反発したのは当然ですが、これまで裁判の対象は「民間企業」でしたが、今回は「日本政府」に賠償を命じたという点で影響はより大きいのです。
 新型コロナ対策などの国内問題に加え、外交・安全保障問題への対応も、難しい一年になりそうです。