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堺市教育委員会

日本マイクロソフト社と連携協定
ICTを活用した「新・堺スタイル」始動

 堺市教育委員会は3月16日、学校教育におけるICTを活用した「新・堺スタイル」による授業の推進と学校園業務の効率化に向けたICTの活用実践を推進するため、日本マイクロソフト株式会社との連携・協力に関する協定を締結した。同社が管理するクラウドを活用した「学び方」、「教え方」、「働き方」の3つの改革の実現を念頭に、大きく2つの取組みを実施。「新・堺スタイル」では、通常授業でのICT活用の定着、誰一人取り残さないICTによるアクセシビリティ支援、英語教育でのICTの活用、「学年別ICT活用能力の水準目標」作成に応じたICT活用支援を、「学校園業務の効率化に向けたICT活用」については、保護者と学校園とのやり取り、教科別研修、学校内情報共有などでのICT活用を目標とする。
 誰一人取り残さない対応としては、帰国・外国人児童生徒向けにWindows端末やOffice 365 Educationを利用する際の表示言語を変更したり、同時通訳のように発話した内容を他言語の字幕として表示、テキストや文章を他言語で読み上げるなど、言葉の壁を解消する使い方に関する情報や研修を提供するほか、「学年別ICT活用能力の水準目標」に対応したOffice 365 Educationを中心としたICT活用に関する情報や研修の提供を行う。また、保護者と学校園とのやり取りのデジタル化として、欠席・遅刻連絡や日程調整、アンケートの実施・集計などの環境構築に向けた活用を進める。例えば、欠席・遅刻の朝の家庭から学校への連絡に関しては、既に堺市内の一部の学校で試行実施されており、保護者からの電話対応や校内の情報共有による教員の負担が軽減され、各種打合せなどに使える時間が大幅に増加するなど成果は良好。今後、マイクロソフト社との協力のもと、学校の規模や環境ごとにシステムを調整し、順次対応が進められている。
 堺市教育委員会によると、「既に堺市立小学校・中学校で一人一台パソコンの配備は完了している。これまでの授業スタイルに加え、ICTを効果的に活用する『新・堺スタイル』を目指していきたい。例えば、理科の実験の様子や、書道の書き方を動画で確認したり、社会科の地図、グラフなどに自分の意見を加えたデータをグループやクラスで共有したりするなど、各教科ごとにICT活用の幅は大きい。今後は、こどもたちの学びの進捗状況に応じた個別最適化が可能なツールとして活用の幅が更に進めば」と語る。
クラウドを活用し教育改革に取り組む(マイクロソフト提供)
クラウドを活用し教育改革に取り組む(マイクロソフト提供)


新教育長に
日渡円氏が就任

 本年4月1付けで堺市教育委員会教育長に日渡円氏が就任した(任期 令和3年4月1日から令和6年3月31日まで)。日渡氏は今後の抱負として「『進取』と『無謬』という言葉を大切にしながら、変化することが常態であるという意識のもと、これまでの慣例にとらわれることなく、子どもたちのため、学校のため、ひいては社会のために何かできるのかを考えながら行動することが大事である。学校園が持てる力を最大限に発揮できるように、家庭・地域と協働しながら、新たな時代を担う子どもたちの育成に尽力したい」と述べた。同氏は、昭和54年に宮崎市公立学校職員として採用。宮崎県五ヶ瀬町教育長、兵庫教育大学大学院教授、大津市教育委員、大津市教育長、兵庫教育大学学長特別補佐などを歴任し、4月に教育長に就任。64歳。

社説

半導体を制する者が世界を制す

元海上自衛隊呉地方総監
金沢工業大学虎ノ門大学院 教授

伊 藤 俊 幸

 自動車や家電製品に不可欠な半導体が不足しています。感染症対策によりパソコンやゲーム機の需要が急増したためと言われていますが、「デジタル化」と省エネが鍵となる「脱炭素化」が推進される限り、半導体不足は今後も続くと予測されます。
 この状況下「半導体を制するものが世界を制する」として、主導権争いをしているのが米中です。両国政府とも「半導体国産化への支援」と「輸出管理」を強化しており、半導体を巡る新冷戦の様相を呈しているのです。
 米国は、三兆円規模になる工場誘致プロジェクトが奏功し、世界最大の半導体受託製造会社 台湾TSMCの工場誘致に昨年成功しました。バイデン政権も、現在半導体部門に五兆五千億円を補助する法案を提出しています。
 輸出管理では、ファーウェイなど中国企業百五十社を指定し、米国製ハイテク製品の輸出を二年前から禁止。バイデン政権も今年四月、スパコンの開発を手掛ける中国の七企業・団体を追加指定しました。「極超音速兵器」開発に関与していたことがわかったからです。
 一方中国は、五兆円の資金を半導体技術開発に投じ、優秀な人材を海外から引き抜き、今の半導体自給率二十%を二〇二五年には七十%に引き上げるとしています。
 輸出管理では、米国への配慮から中国への輸出を自粛する企業を「信用できない会社リスト」に掲載し、中国でのビジネスに制限を加える構えです。
 日本は、四月の日米首脳会談で「半導体を含む機微なサプライチェーンについても連携する」と旗幟鮮明にしました。米政府も、かつては半導体王国といわれた日本に期待しているからでしょう。半導体製造装置や韓国をホワイト国から除外した際に話題になった化学薬品は、今も日本がトップクラスの技術とシェアを誇っています。しかし最先端の半導体生産能力はかなりの後れを取っているのです。本年度から日本企業は、つくば市で台湾TSMCと共同開発に取り組むことになりますが、日本政府の研究開発予算は二千億円、米中と比べると一桁違うのです。半導体の確保は日本の安全保障そのものと捉え、防衛予算に匹敵する規模の支援が必要なのです。大胆な経済安全保障政策を期待したいところです。