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堺東西交通に活路

地域経済の活性化につなげる

歴史と未来をつなぐ「都心交通の将来像」(堺市提供)
歴史と未来をつなぐ「都心交通の将来像」(堺市提供)

 堺市は、堺駅と堺東駅を次世代都市交通(ART)で結ぶことを基軸とした新たな交通システム基本方針「堺・モビリティ・イノベーション(SMIプロジェクト)」を発表した。長年の課題であった東西交通問題解消の一手となるか注目が集まっている。
 「SMIプロジェクト」は大きく「SMI都心ライン(堺駅―堺東駅)」と「SMI美原ライン(都心―美原区)」との2つから構成される。「都心ライン」では〝時代とともに進化する次世代都市交通〟として、脱炭素化を目指した高い環境性能を有する車両を採用し、自動制御技術や各種都市機能との連携可能な技術を搭載。プラットフォームには電子看板や掲示板などを備えたバリアフリー空間を整備しつつ、アクセス利便性向上と合わせた居心地の良い賑わい空間を創出する方針。

堺市全体の魅力向上に向けて

 〝歴史と未来が融合した「堺」を象徴する交通拠点〟として、堺駅周辺・堺東駅周辺の再生も視野に入れられている。
 また、「美原ライン」では、都心エリアとの住民の移動活性化及び地域経済活性化をめざし、拠点ネットワークを強化していく構えであり、ニーズに応じた路線構築に向けて、実証実験などを実施する予定。
 市民の行動や価値観の多様化、自動運転やICTなど先端技術の進展、脱炭素社会といった社会動向に基づき、「堺市基本計画2025」や「堺市SDGs未来都市計画」と整合を図りつつ、都心の将来像とその中でのライフスタイルと交通について方向性を示す本計画。11月頃には基本方針が策定され、2025年の「大阪・関西万博」頃を目処にARTの運行開始、及び各種サービスの導入が行われる方針。

起業家向けオフィス・ラボ
 入居者募集中
さかい新事業創造センター
(S―Cube)

 さかい新事業創造センター(S―Cube 堺市北区長曽根町130―42)=写真=には、新たに事業を始める起業家や第二創業として新たな事業に挑戦する中小企業が多数入居。同センターは、これら企業が行う新製品や新技術の開発・研究への取り組みを支援することで、地域経済の活性化や雇用の創出をめざし活動している。
 施設には創業準備デスクや事務系のオフィス(15~50㎡)のほか、研究開発系のラボ(30~80㎡)を設け、事業内容や企業規模に応じた賃貸スペースを提供。入居者は、無料で経営支援の専門家であるインキュベーション・マネージャーによる支援を受けることができる。
 このほか、これから起業をめざす人や自宅以外で活動場所を求める人などを対象に、起業や事業に関する情報収集や交流の場としても利用できるシェアードオフィス(10席・LAN完備)を設けている。利用は1ヵ月単位(月額5000円・税抜)から可能。
 また、起業に際し必要な知識を習得するためのセミナーも開催している。
 同センターは、地下鉄御堂筋線なかもず駅と南海高野線中百舌鳥駅から徒歩4分と、利便性の高い場所に立地し、近隣に大阪府立大学もあり産学連携にも最適。入居・シェアードオフィスの利用申込は随時募集中。詳細は同センター(電話072―240―3775 HP:https://www.s-cube.biz/)へ


社説

自ら戦う意思がなかった国の末路

元海上自衛隊呉地方総監
金沢工業大学虎ノ門大学院 教授

伊 藤 俊 幸

 イスラム主義組織タリバンがアフガニスタンの首都カブールを制圧しました。
 二〇〇一年九月十一日に発生した米国同時多発テロを受け、翌十二日、国連安保理はテロに対して「あらゆる手段を用いて闘う」と決議。十月七日、米国とその同盟国は、テロ首謀者アルカイダを引き渡さなかったタリバンを掃討するため、アフガニスタンにおける軍事作戦を開始しました。タリバン政権を滅ぼした後の十二月からは、国連安保理決議に基づきNATO軍が「国際治安支援部隊(ISAF)」を編成。アフガン人を招集し「アフガニスタン治安部隊(ANDSF)」要員(兵士と警官)として教育訓練するとともに、一緒に治安維持にあたることなりました。
 二〇一四年十二月ISAFは戦闘任務を解除し、「確固たる支援任務(RSF)」としてANDSFに対する教育訓練・助言の任務に専念することになりました。その一方で米軍だけは、引き続き対テロ作戦を担う「自由の番人作戦(OFS)」も遂行していました。しかし、タリバンの攻勢が激化したのはこのころからでした。
 今回ANDSFが三十万人もいたにも関わらず、軽武装で六万人のタリバンに、あっという間に制圧された背景には、逃亡したガニ大統領が「現金を車四台に詰め込み、残りをヘリコプターで運ぼうとした」と報じられたように政権自体が腐敗していたのでしょう。また筆者は、現役当時「識字率も士気も低く、教育成果がでない」と米軍高官が嘆いていたことを思い出します。
 今回「米軍を撤退させる」バイデン大統領の強い意志はぶれませんでした。想定以上に政権崩壊は早かったでしょう。しかし米軍は「国家建設のためではなく、再びテロの温床になることを防ぐために存在した」のは事実です。そして「アフガン軍がタリバンに立ち向かわないのであれば、米軍が駐留しても意味がない。」これも至極当然の考え方です。
 逆にこの二十年間で約二五〇兆円を費やし、二五〇〇人の米軍兵士、四千人もの米民間人が亡くなったという、意思決定に強い影響を及ぼす「サンクコスト(埋没費用)」を切り離して決断できたのは、それだけ米国民の強い意思があったからでしょう。民主主義国家として評価すべきなのだと思います。