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市民と描く挑戦の軌跡
堺市SDGs未来都市計画

加藤均 市長と語る

 2021年、長引くコロナ禍は、堺市においても例外なく市民生活に大きな影響を及ぼした。しかし、オンラインの活用など工夫次第で新たな可能性の発見があった。また、アフターコロナにおいて、独自の歴史や文化を有する堺の魅力を世界に発信すべく主要7か国首脳会議(G7)の関係閣僚会合を誘致することも表明され、市長の未来を見据えた計画も示された。かかる状況のもと、恒例の永藤英機堺市長と、認定特定非営利活動法人 日越堺友好協会の加藤均理事長との恒例新春対談が行われた。司会は、河本順雄 奈良県自衛隊家族会長が務めた。
永藤英機 堺市長
永藤英機 堺市長
河本
 あけましておめでとうございます。恒例新春対談を始めたいと思います。昨年、新型コロナウイルス感染症においては、感染者数増減の波が繰り返され、特に第5波においては「国難」と言える状況となりました。その後、ワクチン接種をはじめ数々の予防対策と国民の努力により感染者数は急激に減少しましたが、今なお予断を許さない状況が続いています。当然、堺市においても例外ではなく、多くの事業者のみならず、市民生活にかなり影響があったと思います。
感染者数が落ち着いている現在、今後の感染症対策や経済回復計画などについて、昨年1年を振り返った上で、市長に新年の抱負をお伺いしたいと思います。

コロナ 
新たな工夫と未来を見据えたチャレンジ

永藤
 2021年は、まず感染の第3波から始まり、第4波、第5波と、特にこの大阪では回を追うごとに感染拡大の影響が大きくなり、堺市も対応に大変苦慮しました。何とか市民の皆様の命と健康を守りたいと全力を尽くしてきました。その中でも一つ希望の光が見えたのはワクチン接種でした。こちらも医師会をはじめとする関係者の皆様のご協力のおかげで迅速に進めることができ、特に75歳以上の方は99%以上が2回接種を終えています。第5波において感染者数が急速に減少してきたのは、ワクチンの効果が大きいのではないかと思っています。
一方で11月末から12月、オミクロン株という新たな変異株も発見されており、これから未知の変異株がまだまだ出てくる可能性があります。私たちは決して気を緩めることなく、引き続き感染対策を最重要課題として取り組んでいます。あわせて、いつまでもコロナ禍だ、自粛だということであれば、市民の皆様の気持ちもどんどん沈んでいきます。観光産業や小売業、文化・芸術、国際交流の分野では、withコロナの影響がまだまだ続くかもしれませんが、先を見据えたチャレンジを私たちも行いたいと思っています。
その中でも2021年に取り組んだこととして、オンラインを活用した区民まつりがあります。本来は7区で多くの方が集まり開催しますが、今回、一部の区ではオンライン形式で開催しました。そうすると、普段は見ることができない裏方の皆さんの表情を見ることができました。私も、それぞれの区民まつりに伺ってておりますが、より区民まつりを深く知ることができたということもあります。コロナ収束後も、例えば実地とオンラインの両方を組み合わせるようなことができれば、コロナの経験を糧として、さらにいいものが作れるのではないかと思っています。
また、本市とニュージーランドのウェリントン市は姉妹都市ですが、同市長とオンラインで対談を行い、コロナ対策や環境問題について話し合いました。コロナが発生していなければ、オンライン対談はおそらくなかったことと思います。コロナ禍だからこそ得た貴重な経験を、ぜひ次にも活かしていきたいと考えています。
河本  新たな変異株に対する感染対策の重要性と、経験を活かした工夫とチャレンジですね。
永藤
 もちろん感染拡大が起きないに越したことはありません。不幸にも亡くなられた方も多くおられますが、そこを乗り越えて様々な社会の在り方が変わっていく、大きな転機になったと思っています。
河本  社会の変化に対し柔軟な対応が求められますね。予防対策としてワクチンも必要不可欠ですが、重症化を防ぐためにも治療薬の開発が期待されます。
2022年 堺の未来を熱く語る
2022年 堺の未来を熱く語る
永藤
 そうですね。特に、経口治療薬ですね。感染した際に、注射や点滴で治療することはもちろんですが、やはり経口治療薬が出ると医師の診療の幅が広がります。早く様々な治療薬が開発されることを期待しています。
河本
 患者自身が少しでも対応できれば、ご指摘のとおり医療従事者の負担も軽減されますね。
 昨年堺市は、新しいSDGs未来都市計画を策定されました。そのことについても、少しお聞かせ願えればと思います。

堺のSDGsとは
展望共有と政策深化

永藤  2021年に策定した計画は、大きいもので2つあると考えています。
1つは、堺市政の大方針であります「堺市基本計画2025」です。これが一番大きな計画で、この計画に基づいて堺市として行政が動いていく。そして、市民の皆様にもご理解・ご協力をいただきながら、堺市のビジョンを皆さんと一緒に共有していくというものです。これは私が就任してから2年間でまとめ上げたものであり、目標達成に向けて、今年も力を尽くしたいと思っています。
そして、もう1つはSDGs未来都市計画です。SDGsには17のゴールがあります。堺市ではその17のゴールに既存の事業を当てはめたものが多くありました。今回の策定に至っては、そもそもの17のゴールの目的を直視し、それらに紐づく169のターゲット全てを確認した上で、堺市が世界のために何ができるかを見据えて計画を策定しました。社会的にも関心が高まっているSDGsを、市民の皆様及び事業者の皆様と協力しながら進めていきたいと考えています。
河本  事業者の協力も必要不可欠ですが、市民一人一人の協力が大きな力になるのでしょうね。
永藤  新たな計画にあわせて立ち上げた「堺市SDGs推進プラットフォーム」にはすでに400を超える企業や団体が参加いただいています。プラットフォームを核に市民、企業の皆様とのパートナーシップにより取り組んでいます。

歴史を温ね、国際を知る

河本  堺には非常に長い歴史があり、また、国内有数の国際都市であるというイメージがあります。その中で諸外国との連携について、何かお考えはありますでしょうか。
永藤  まさに今おっしゃったとおりで、海外とのやり取りや交流がなくては、今の堺はなかったと思っています。古墳時代、中世の黄金の日日、そして現代に至るまで、堺は海外との交流を経て発展してきた都市です。その意味でも、これまで「堺・アセアンウィーク」として行ってきた事業に加えて、姉妹・友好都市との更なる連携を深めながら、地球規模で考える多くの社会課題等について、意見交換をしながら進めていきたいと思っています。
12月には大阪府と経済界との連携により、2023年に日本で開催されるG7サミット関係閣僚会合を誘致することを発表しました。G7という世界で一番大事な会議の関係閣僚会合を誘致することによって、市民の皆様に国際都市としての誇りを感じていただきたいという思いがあります。
河本  歴史ある堺市での実施は、国際都市再認識としても注目ですね。
永藤  そうですね。特に、これまで大阪市内が注目されがちでした。大都市という面では間違いなく大阪市が西日本一の都市ではありますが、日本の中でも独特の歴史・文化を構築してきたのは堺です。日本の真髄のようなものを感じていただく意味でも、堺へのG7関係閣僚会合の誘致を成功させたいと思っています。

「国防」への正しい理解

河本
 私の住む奈良県は、もともと堺県の時期がありました。また、堺はヤマト政権とも深いつながりがあります。ぜひとも誘致を成功していただきたいと願っております。
加藤理事長は民間の立場から、国際交流と国防について長年にわたり熱心に活動されております。昨年を振り返ると共に、今後の活動などについて、お伺いしたいと思います。
加藤  まず、市長にお礼を申し上げたいと思います。市長以下、市民の皆様のご理解及びご協力のおかげで自衛隊への理解が深まったということです。私は、国防に対する持論として、「自国防衛」こそ重要であり、そのためには自衛隊の強化が不可欠であると考えております。特に自衛隊員の募集は中々大変なものですが、堺市は、大阪府下での募集数でトップクラスを維持しています。また、市長のご理解により、自衛隊音楽隊の出演する「ふれあいコンサート」の開催が昨年で21回を迎えました。昨年来られた中部方面音楽隊長の話では、フェニーチェ堺は全国で5本の指に入る素晴らしい音響のホールだそうで、大変感心されておられました。
 さらに、コロナ禍以前は、多いときで年に6回程度、堺に自衛艦が入港しておりました。過去には、「かしま」という練習艦隊の旗艦が入った際、司令官から「加藤さん、堺出身の自衛官がいるから会いますか」と言うので会ったんです。2人とも上野芝中学校出身で、自衛官になり、艦に乗って堺に入ってきたそうです。「どうして君たち自衛隊に志願したの」と聞いたところ、堺にイージス艦が入港した際、彼らは見学に来て、艦の中を見て、「俺たちの生きる道はこれだ」と決めたそうです。ですから、自衛隊の募集には皆様大変苦労しておられますが、堺の場合は音楽会などのイベントに若い方々も来られますし、何より理解をいただいております。こうしたことが募集につながるようでございます。しかもそれだけではないんです。去年のことですが、自衛隊募集の垂れ幕がありますね。
永藤  はい。掛けさせていただいています。
加藤  これを全7つの区役所に出していただいておりますが、これは政令指定都市では堺が初めてだそうです。
永藤  そうですか、光栄ですね。
加藤  この功績により堺の所長が自衛隊大阪地方協力本部長から感謝状をいただいたそうです。堺のように自衛隊への理解が深い地域は少ないものですから、また、これからもぜひ力を貸してやっていただきたいと思います。
(次頁へ続く)