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遺された祖父の想い

120年前の航海日記

大切に保存されてきた遺記
大切に保存されてきた遺記

 「明治三拾五年四月一日 帝國軍艦浅間高砂ノ二隻ハ常備艦隊司令官伊集院海軍少将ノ指揮ノ下ニ英國渡航ノ命ヲ受ケタリ 蓋シ日英同盟成リテヨリ幾モナクシテ英國皇帝戴冠式参列之為ソナリ 帝國軍艦ガ艦隊ヲ編成シテ歐州二面航スル如キハ空前ノ盛事ニシテ我海軍天上ノ一大光彩タラズレバ アラズ依テ渡英見聞ノ儘ヲ記シ以テ記念トス」
 1902年、渡英の命を受けた海兵の日記の書き出しである。大阪府河内長野市在住の蔭山孝代氏(85歳)が大切に保管し続けてきた航海日記。記した故浜野幸一氏は蔭山氏の祖父にあたる。
 日記には、日本を出発してからイギリスに到着するまでの道程が詳細に記されている他、当時の街並みやイギリス人の持つ文化や技術、イギリス王室の戴冠式の様子などが事細かに記されていた。

航海日誌を記した浜野幸一氏(後列右)
航海日誌を記した浜野幸一氏(後列右)
 蔭山氏は日記を保管してきたことについて「ちょうど10歳の時が終戦の年でした。当時は中国から日本への引き揚げ船を今か今かと待ち続ける毎日。中には帰れなかった人もたくさんいました。今こうして健康で幸せに自分がいることはとても有難いことです。国を守る仕事をしている方々は、今の日本の底力だと誇りに思います。終戦でどうなるかわからなかったあの頃、二度の世界大戦を乗り越えてきた1900年代の日本には、まさに色々なことがあったんだと感慨深い想いです。何か歴史を認識する一つの材料となればと思い、今日まで大切に保管しておりました」と想いを語った。 
 また、蔭山氏と親交が深く、日記を預かり受けた行司数巳氏は「この航海日記からは、まさに『歴史』を感じました。その当時、蒸気機関の船で渡英したこと自体が驚きでなりません。長男が海上自衛隊の呉駐屯地にいることもあり、自衛隊の皆様には大変お世話になっております。時代を記録するものを後世に伝えていくことは大切なことです。今後、この日記が必要とされるところで有意義に使われることを願っています」と述べた。
「歴史を語り継ぐ材料になれば」と語る蔭山孝代氏(右)と行司数巳氏(左)
「歴史を語り継ぐ材料になれば」と語る蔭山孝代氏(右)と行司数巳氏(左)

泉佐野市
ベトナム水害へ見舞金

真瀬副市長(中央)からグエン・ホン・ハー総領事(右)に目録が贈られた
真瀬副市長(中央)からグエン・ホン・ハー総領事(右)に目録が贈られた

 昨年11月末、ベトナム中部及び中南部では相次ぐ豪雨が発生。同地域のビンディン省などは甚大な洪水被害を受けた。これに対して1月19日、泉佐野市副市長 真瀬三智広氏、同市国際交流担当 川野憲二氏及び日越堺友好協会理事長・泉佐野市特別顧問 加藤均氏らは、在大阪ベトナム総領事館(堺区)を訪問。泉佐野市長 千代松大耕氏からビンディン省水害被災に係る見舞金として50万円が在大阪ベトナム総領事のグエン・ホン・ハー氏に送られた。
 泉佐野市はビンディン省と友好都市提携を結んでおり、これまで様々な交流が続けられてきた。ハー総領事は「日越関係は現在、戦略的パートナーシップをはじめとして良好な関係であり、日本はベトナムにとって最大の協力国と言えます。その背景としては地方間の協力が大きく、中でも泉佐野市とビンディン省の関係は緊密なものであり、堺市においては加藤氏の力も大きいと感じています。今回の泉佐野市長をはじめとした皆様からのご支援に大変感謝いたします。来年は、日越外交関係樹立50周年の年になります。ぜひ今後も泉佐野市とベトナムとの良好な関係を継続するとともに、地方間協力を促進できればと思います」とコメントした。また、真瀬副市長は「本市ではベトナム人在住者が増える中、外国人でも住みやすく働きやすい市を目指しているところです。コロナによって生活難となっている外国人の方々に対するサポートなど、『おもてなしの精神』を持ちながら各種事業を手厚く行っております。今後も、本市とベトナムとの良好な関係を継続するとともに、皆様が安心して泉佐野市にお越しいただけるような街づくりをしてまいります」とコメントした。


社説

防衛力強化加速パッケージ

元海上自衛隊呉地方総監
金沢工業大学虎ノ門大学院 教授

伊 藤 俊 幸

 先月十七日、通常国会が召集されました。令和四年度予算案の審議が始まり、昨年末閣議決定され過去最大となった防衛予算案も審議されています。
 令和四年度の防衛予算案は、「防衛力強化加速パッケージ」と名付けられ、いわゆる「十六か月予算」として編成されました。具体的には、昨年十二月二十日に成立した補正予算と、現在審議中の本予算を合算し、一体ものとして防衛予算を計上する新方式が採用されたのです。
 その結果、米軍関連費を含めた六兆一七四四億円を計上した予算案となり、前年度より四四〇〇億円の増額となりました。
 陸海空自衛隊にとっては、毎年何かしらカットされる主要装備品ですが、今回は初めて概算要求の全てを予算案に計上することができたのです。
 研究開発費についても、次期戦闘機の開発費やスタンド・オフ・ミサイル(敵の対空ミサイルの射程外から攻撃できる長射程ミサイル)能力の強化。将来の戦闘様相を一変させるゲーム・チェンジャーとなる最先端技術への投資も含め、二九一一億円が計上されました。これは前年度と比較すると約四〇%の増額になります。
 中国との軍事バランスという観点から見ると、海自は、護衛艦二隻・潜水艦一隻を含む計五隻の艦艇を取得するとともに、P―一固定翼哨戒機三機の取得や、いずも型護衛艦の改修も計上されました。空自はF三五A戦闘機八機・F三五B戦闘機四機を取得するとともに、F一五戦闘機とF二戦闘機の能力向上も計上されましたから、中国に対する一定の抑止力を確保しているといえましょう。
 米中の対立が顕在化して以来、特に最近は、今日にも中台紛争が起こるかのような報道が行われています。しかし今現在の中国の軍事力では、台湾を直接侵攻することはできないでしょう。
 一方筆者は、二〇二七年に着目しています。その年は、中国人民解放軍創設百年に当たり、中国のGDPが米国に追いつくと予測され、習近平国家主席が今秋の共産党大会で続投を決めれば、三期目の任期を終える節目の年にあたるからです。
 その時点で中国と日米の軍事バランスが崩れていないようにしなければなりません。今から五年間の防衛費は極めて重要なのです。