著者はエリートコースを約束される幹部候補生学校を中途退校し、通信社やITベンチャーを経て、現在は執筆活動を行う元陸上自衛官。自らの体験も交えた前著『防大女子』(令和3年)に続く、〝国防に人生を捧げる生身の人間〟シリーズ第2弾といえよう。
そもそもなぜ、本書のように自衛官の再就職が話題となるのか。それは、「雇用管理改善」「高齢者雇用促進」が高唱される現在においても、自衛隊は精強さを保つため、早ければ54歳で定年を迎えるからだ。退官後の自衛隊員が、戦後いまだ干戈交えることなき外敵より前に、独自の雇用制度と戦っている現状を問うところから本書は始まる。
一般の日本人が普段目にする「元自衛官」といえば、メディアに登場する学者・評論家であろうが、かつては学界から白眼視されていたという。20年少し前、評者が通う大学学部に元海将が教授として特別招聘された際、新聞が明らかに好意的でない取り上げ方をしていたことを想起する。本来は専門性を重視すべき、さらに昨今は人権啓発が盛んな学界(教育界)において、いわれなき差別意識があったことは我々も猛省せねばなるまい。
この問題は、「ブラック企業のような自衛隊で働いたんだから、天下りくらい優遇すべき」といった類の話ではない。「こと定年まで自衛隊に所属していた人間にとっては、『自衛隊ほど居心地のいい場所はない』と感じている人間が多いこともまた事実なのだ」という本書の指摘は重要である。昨今「自衛隊の不祥事」が極端な表現や不正確な背景説明で報道されがちだが、自衛隊が魅力的な職場だと認識され、偏見なく就職を希望する日本人が一定数存在し続けることこそ、再就職を前向きに議論する大前提であるのは言うまでもない。
ただ、元自衛官が、自衛隊と民間企業との違いに戸惑うことも多い。「多様性」という名のもと考え方が違う人間が机を並べる組織、自衛隊では問われなかったコスト意識、上意下達だったのが「お願いベース」の指示へ……そんな中でも、現役時代と変わらず「仕事をしっかり遂行する」ことで社会の信頼を勝ち得てきた群像が、著者の広範な取材により描かれている。
一方で著者は、再就職に臨んでの「自衛官の意識の低さ」「自衛隊の援護の構造上の問題」の指摘、また「『元軍人』という経歴が尊敬される諸外国がうらやましい」との声も取り上げている。国防という尊い務めを果たした自衛官たちが、その人生そのものにも満足できる日本社会を再構築するための大きなヒントを与えてくれる好著である。
日本経済大学准教授
久野 潤
堺 アルフォンス・ミュシャ館では、企画展「イリュストラシオン ミュシャとアール・ヌーヴォーの挿絵」を開催中。
ミュシャの画家としてのデビューは挿絵(フランス語で「イリュストラシオン」)の仕事から始まる。ミュシャはポスター画家としてパリで一世を風靡する前から、書籍や雑誌の挿絵を描くことで生計を立てていた。その後、売れっ子の画家になってからも挿絵を描き続け、生涯に250冊以上の書籍や雑誌に挿絵や作品が掲載された。同展では、ミュシャが挿絵から装丁までを手がけた書籍をはじめ、同時代のアール・ヌーヴォーの美しい挿絵本、さらにミュシャの後半生の大作とそれに関連する挿絵作品も紹介されている。初期から円熟期に至るミュシャとアール・ヌーヴォーの挿絵の世界を堪能できる機会となっている。7月28日まで。
堺アルフォンス・ミュシャ館
堺区田出井町1―2―200
ベルマージュ堺弐番館
(堺市駅前)
9時30分~17時15分
(入館は16時30分まで)
TEL
072―222―5533
観覧 一般510円、高校・大学生310円、小・中学生100円
月曜日休館(休日の場合開館・5月6日、7月15日は開館)、休日の翌日(5月7日、7月16日)
https://mucha.sakai-bunshin.com
救急要請の注意点
意識が無い、顔半分が動きにくい、胸や背中の突然の激痛、突然の激しい頭痛、こんな症状の時は急いで119番通報し、救急車を要請してください。
急な病気やケガなどで、病院に行ったほうがいいのか、救急車を呼べばいいのかなど、判断に迷ったときは、左記「救急安心センターおおさか」をご利用ください。
連絡先
救急安心センターおおさか
「#7119」または「06―6582―7119」(24時間365日対応)
「救急安心センターおおさか」は、救急医療の電話相談窓口として、看護師が医師の支援体制のもと24時間・365日対応します。容態などをお伺いして緊急性が高いと判断した場合は、直ちに救急車が出動します。
賃貸物件で不動産経営をしている者が増えているが、その物件に対する家賃収入に消費税は課税されるのか否か疑問に思っている方も多い。実際はどうであろうか? 結論から言うと居住用の家賃収入など(註1)は原則消費税は非課税である。が、事業用(事務所、店舗など)の賃貸物件は課税されるのである。しかし、この場合でも年間の賃貸収入が1000万円以下(註2)であれば消費税は課税されないことになっている。
(註1)礼金、管理費、共益費なども含む。
(註2)基準期間の課税売上高が1000万円以下の場合は免税業者となるので。
尚、居住用物件には消費税は原則としてかからないが非課税になるには次の3つの条件がある。
㈠ 賃貸期間が一か月以上の期間であること
㈡ 契約書に居住用と記載されていること
㈢ 賃貸借契約書がなく、賃貸の用途も明確でなくても居住の実態があること
事業用物件(事務所、店舗など)に対しては消費税は課税されるが、住居兼事務所の場合、事務所部分と住居部分に分かれて独立して使用しているケースは事務所として使用されている部分は消費税の課税対象となり、住居として使用されている部分は消費税の課税対象とはならない。一方、住居として主に使用、事務所や店舗も兼ねている場合は基本的には住居扱いとなるため消費税はかからない。その場合、住居用として判断するには住宅の賃貸借契約に於いて賃貸用途を住宅用と記載されていることが判断材料となる。また、2020年4月からは賃貸契約書が無いなどで賃貸の用途が明確でなくても居住の実態が明確であれば居住用と判断されることとなった。
条件により課税されるケースもあれば非課税になるケースもあるので詳細は管轄の税務当局にてご指導の程を。
税理士 大西 正芳