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堺ではじまる
学校図書館から新しい教育

堺っ子たちとふれあう木原敬介堺市長 (「市長のまちかど訪問」 で)

堺っ子たちとふれあう木原敬介堺市長 (「市長のまちかど訪問」 で)

 学校図書館の充実については、 平成20年6月11日に総務財政委員会で加藤均市議 (自由民主党・市民クラブ) が学校図書館について財政当局と議論をし、 教育委員会とともに勉強会を重ねてきた。 今年4月には予算化され、 「学校図書館教育推進事業」 が始まった。 モデル校 (1中学校区4校・錦西小学校、 市小学校、 三宝小学校、 月州中学校) 及び、 協力校 (8中学校区24校) が選定され、 各校の学校図書館に専従スタッフが配置された。
  現在各モデル校・協力校では専従スタッフによる蔵書整理、 調べ学習のための学習支援などが行われている。
  木原敬介市長、 加藤均議員、 大平睦美氏 (大阪大学人間科学部特任研究員) の三人が学校図書館の未来について語り合った。
  教育委員会が学校図書館に人を配置するのは初のことである。 堺市の学校における司書教諭の配置率は100%であるが、 司書教諭に対しての負担軽減措置などはなく、 各学校が保護者や地域ボランティアの協力を得るなどの取り組みにより学校図書館の運営を行ってきた。 また、 蔵書冊数も文科省の 「学校図書館基準」 を満たしている小学校が29校と、 「ひと」 も 「本」 も足りないのが多くの学校図書館の現状である。
  「学校図書館教育推進事業」 では 「学校図書館を活用することで、 子どもたちに生涯を通じて楽しみ学ぶことのできる読書教育の推進」 「情報リテラシー (読む・書く・話すことを含めた情報活用能力) の育成」 「地域に開かれた学校図書館」 を目的にして、 6月から専従スタッフを配置した。 「ひと」 の配置で学校図書館の扉が開かれ、 蔵書整理や学習支援だけではなく子どもたちが本と親しむ場となっている。 モデル校では学校図書館の利用が飛躍的に増加傾向にあるが、 学力向上をも視野にいれた堺市独自の事業は始まったばかりであり、 学校教育の中核としての学校図書館の機能とその役割について今後の課題と展望について三氏が意見を述べあった。
加藤 「教育は市政の要です。 堺独自のこの事業での、 モデル校の取組みを市内全校に広め、 子どもたちの学習環境を整え、 将来を担う子どもたちの学力の向上を図ることが、 よりよい堺を作ることにつながります。 ぜひ、 この事業を発展、 継続して欲しい。」
大平 「学校教育に寄与する学校図書館の運営のためには、 学校図書館=読書だけではなく、 情報収集、 発信する場であることを認識すること。 それにより教育の内容をよりよく転換することをも可能であると考えています。 私が考えます学校図書館運営に必要な5つのC、
・COMMUNICATION
(情報・意見などの) 伝達
・COLLABORATION
  協力・共同研究 
・CONVERSATION
  会話・対話
・CONTINUITY 継続
・CREATION 創造する
を実行することで学校図書館担当者をはじめ、 学校教育に関わるすべての人と共に、 ひとがいて、 充実した蔵書とコンピュータを含めた多様なメディアを用いた理想の学校図書館を実現することを目指しています。」
市長 「学校図書館の充実は、 子どもたちの人間力、 生きる力を育てる大きな役割を担っています。 そのためには、 今後も継続してこの事業を支えていく必要があると考えています。 蔵書の充実や多様なメディアの導入、 さらには最も重要である人の問題として専門性の高い専任司書教諭の採用、 教員OBの活用、 配置についてなど、 学校図書館の充実を堺の学力向上につなげたいと考えています。」

図書館教育推進について話し合う木原市長(左)と大平氏(右)

図書館教育推進について話し合う木原市長(左)と大平氏(右)





社説

山荘にちっ居して思う
不況と気象異常に直面して

 例年のように、 7月末から軽井沢の山荘に滞在している。 今年の信州の雰意気は、 これまでとはかなり異っている印象が強い。 すべてに低調で、 活気が乏しいように感じられてならないのである。
  隣り近所の別荘も、 8月の10日を過ぎた現在でも、 誰も来ていない家が目立つ。 毎年のような交通渋滞も余りなく、 商店街もいささか静かである。 タクシーの運転手なども、 来荘者や行楽客の入りの少なさを異句同音に指摘する。
  長野県内各地では、 夏祭り、 音楽会、 夏期大学などのさまざまな催しが、 例年の如く展開されてはいる。 観光業者や旅館業界でも、 いろいろなイベントを企画し、 観行客、 行楽客の誘致に懸命である。
  それにもかかわらず、 今一つ盛り上りに欠け、 低調のようである。 それどころか、 企業などが地域住民や社員との親睦のために、 これまで毎年行って来た、 企業の祭りの中止が相次いでいることなどが、 報道されている。
  このような状況を見ると、 底をついたとはいわれるものの、 まだ十分に回復のきざしが伺えない、 この世界的な大不況が、 色濃く影を落しているといわざるを得ない。 これに追い打ちをかけているのが、 この夏の余りにも異常な気象であろう。
  遅い梅雨明け、 豪雨と長雨、 日照不足と低温といった、 不順な天候は異常である。 このために、 私たちの避暑生活も例年のように快適なものではない。 時には、 寒さすら覚えることがある。
  長野地方気象台によれば、 7月の日照時間は平年の半分であり、 降水量は79年の統計開始依頼最多である。 こうした異常気象の故に、 米や野菜などの不作が懸念され、 すでに野菜の価格上昇が取沙汰されているが、 そればかりではない。 観光客、 行楽客の足もにぶらせられていることは疑いない。
  事実、 北アルプスなどの県内山岳への登山者数などは大幅に減少している。 長野県警地域課のまとめによれば、 7月の県内山岳への登山者は約8万2千人で、 約3万3千人も減少しているということである。
  さらにいうならば、 夏休中の衆院総選挙という異例の政治状況も、 このような現象にあるいは微妙な影響を及ぼしているのかも知れない。
  このような信州の状態は、 夏の最盛期、 お盆休みの最中を迎えても、 どうも余り大きな変化は見受けられない。 それだけに、 この状況はなお続くように思われる。 このような事態に一体どのように対処すべきか、 山荘にちっ居しながらも、 いささか思い悩むこのごろである。
  しかし、 何かすっきりした対応を期待しているのはひとり私のみではなかろう。 何はともあれ、 単純明快な対応はなかろうが、 衆知を集めて取り組むことが不可欠であろう。
生  田  正  輝 (慶応義塾大学名誉教授)