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 届け、「夢と情熱」

 学生開発の超小型衛星が 世界初のミッションへ

「『ミウラ折り』を活用した超小型衛星『ひろがり』」
「『ミウラ折り』を活用した超小型衛星『ひろがり』」

 大阪府立大学(堺市)と室蘭工業大学(北海道)の学生らが共同開発した超小型衛星「ひろがり」が2月21日、アメリカのNASAから打ち上げられたロケットに載り、宇宙空間に打ち上げられた。
 「ひろがり」は、両大学の学生ら約60名が主体となり、2016年の9月に計画がスタートしてから約4年の開発期間を経て完成。与えられた世界初のミッションは、10㎝×10㎝×20㎝と小型の衛星内部に、プラスチックのような厚手のものでもコンパクトに収納することができる「ミウラ折り」といった技術を活用したパネルを内蔵し、宇宙空間での展開実験を行うことだ。将来は太陽光発電や気象観測の精度向上などに期待が持たれている。
 また、「ひろがり」は、3月14日、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」から宇宙空間に放出され、同21日20時30分頃、無事に電波の受信確認が取れたともに、地上からの電波送信も完了。良好な衛星状態を保ちながら、今後は約3ヶ月の間、衛星内部に搭載されたカメラにより展開構造物の観測が行われる。

「大阪府立大学小型宇宙機システム研究センター(SSSRC)のメンバーら」
「大阪府立大学小型宇宙機システム研究センター(SSSRC)のメンバーら」

 開発に携わった大阪府立大学 小型宇宙機システム研究センター プロジェクトマネージャーの仲瀬寛輝さん(4回生)は、「このプロジェクトは、学生が主体となり一から開発を行ってきました。『自分たちがやりたいことをやる』ということだけが私たちのモチベーションです。また、今回の開発の中で何より苦労したことは、新型コロナウイルスの影響により開発の中で何もできない期間があったことです。衛星を直接触って研究できないことは想像以上に痛手でした。しかし一方で、チームの共通認識を保つため、オンラインによる打合せは綿密に行いました。却って良いコミュニケーションが取れたのではないかと感じています。今後も、小型宇宙機システム研究センター(SSSRC)での活動を通じて宇宙に関わっていくとともに、後輩たちに対して知識とノウハウのみならず、私たちの意志を継承していければと考えています」と熱い思いを語った。また、同センター広報担当の森瀧瑞希さん(3回生)は、「私たちのスローガンである『夢と情熱』こそが、今回の開発の鍵だったのではないかと感じています。このプロジェクトは、文部科学省の宇宙航空人材育成プログラムによる助成金とふるさと納税による寄附金を主な開発資金として活動しています。昨年の12月からは、新たなミッションの策定にも入っており、今後もより良い開発を続けられるよう『夢と情熱』を絶やさず頑張っていきたいと思います」と語った。

ふるさと納税制度による支援について
https://www.sssrc.aero.osakafu-u.ac.jp/contribution/


ベトナム特命全権大使
来堺

 3月3日、駐日ベトナム社会主義共和国大使館 ヴー・ホン・ナム特命全権大使が堺を訪れ、長年にわたり交流のある認定特定非営利活動法人 日越堺友好協会(堺区)の加藤均理事長を表敬訪問した。
 ナム大使は、コロナ禍におけるベトナムの現状、日本滞在ベトナム人の労働状況などを話した。
 加藤均理事長は、ビンディン省における観賞用さくら植栽事業などの進行状況を報告、また、コロナ収束後、関西地域での「ベトナムフェスティバル」の継続的な開催も提案された。
 同席した株式会社加藤均総合事務所の加藤浩輔社長からは、ビンディン省で進められている「水産業発展に関する支援事業」(マグロ漁獲方法の近代化)についての説明があった。
 ナム大使は「加藤理事長には引き続き両国の交流促進についての協力を求めたい」と述べた。
ヴー・ホン・ナム特命全権大使(右)と加藤理事長
ヴー・ホン・ナム特命全権大使(右)と加藤理事長

社説

防衛装備品移転は国の責任で

元海上自衛隊呉地方総監
金沢工業大学虎ノ門大学院 教授

伊 藤 俊 幸

 三月十三日、日本・米国・オーストラリア・インドの4か国は、海洋安全保障協力などを盛り込んだテレビ首脳会議の共同声明を発表しました。これは名指しを避けながらも、東・南シナ海で軍事力を背景に一方的な現状変更の試みを強める中国をけん制したものです。
 この4か国による「Quad(クアッド)」は、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)構想」の中核をなす国家間の枠組みです。「FOIP」は、安倍前総理が提唱し、それを米国のトランプ前政権が担ぎ、今や豪・印・英・仏・加・ニュージーランド・ASEANも表明する構想です。
 これが目指す三本柱は「法の支配、航行の自由、自由貿易等の普及・定着」「経済的繁栄の追求」「平和と安全の確保」ですが、その本質は、米インド太平洋軍司令官デビッドソン海軍大将が「北京中心の秩序とFOIPの競争」と表現したように、中国を取り巻く国家群にとって重要な、対中外交・安全保障政策になったのです。
 防衛省・自衛隊が担う分野は、海上自衛隊を中心に関連国と共同訓練を行うことに加え、防衛装備品の移転が重要な役割を担っているのです。昨年十一月四日 「海自護衛艦をインドネシアに輸出する計画が進んでいる」と読売新聞が報じましたが、これは菅総理のインドネシア訪問時の話題の一つだったのです。
 ただしこれまで潜水艦や飛行艇などの大型案件についてはうまくいっていません。これは移転国政府との交渉も含め、民間企業に防衛省がほぼ丸投げしてきたからなのです。
 現在日本は、FMS契約という国家間契約によって米国から武器を購入しています。これと同じように、防衛装備品の移転は、本来国家機関である防衛装備庁が、実施に関し全責任を負うべきなのです。
 このまま民間企業だけに費用と労力の負担を強いるなら成果を上げることはできません。日本も防衛省が企業に代わって責任を負う「日本版FMS契約制度」を整備する必要があるのです。
 菅総理は政権発足当時、携帯電話料金値下げなど、いくつもの政策課題を関係大臣に矢継ぎ早に指示されましたが、防衛大臣にも、是非この制度の整備を課題として指示していただきたいものです。