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河内長野市立美加の台中学校で

〝いのち〟を守る防災講話

大阪地方協力本部 清水智宏3等海佐

 自衛隊大阪地方協力本部 阪南地区隊長 清水智宏3等海佐は6月18日、河内長野市立美加の台中学校の2年生39名に対して防災講話を行った。
 講話の中で清水氏は、ハザードマップを用いながら、美加の台地域が大規模かつ長期的に電気・水・食料不足に陥り、孤立地域になる可能性及びその災害危険性などに言及し、最新のハザードマップをもとに常に最新の危険予測を行うこと、時と場所を問わず災害の可能性を疑うこと、地域間でのつながりの重要性などを述べた。さらに、美加の台地域の管轄である信太山駐屯地の初動対処部隊「FAST-Force」をはじめとした各種後方支援部隊、大規模災害発生時の対応など自衛隊の組織体制及び活動についても紹介し、災害への心構え、脱出術の把握、日頃の備えなどを呼びかけた。

ハザードマップを用いながら講話を行う清水氏
ハザードマップを用いながら講話を行う清水氏
 同生徒らによるアンケートによると、防災講話の満足度は、5段階評価で平均4.51と高評価であり、生徒たちからは「ハザードマップ、脱出など等、沢山の事を知れて、正しい判断・行動が次からできる気がする」、「家族会議や備蓄品の確認をする」などの感想が寄せられた。また、自衛隊への印象の変化も5段階評価で平均4.49と高評価であった。
 清水氏は、「防災は、自分にできるベストを尽くすことが大切。受け身ではなく、避難情報などをもとに自ら考え、危険性を判断し、実行(訓練を含む)すること。この講話は意識を変えるに留まる。今後、防災訓練などで自分の行動を変え、それを習慣化させて欲しい。そうすれば、性格や人生までもが変わるはずだ。このため、今日の一連の流れは、防災だけではなく、生活すべてに通じるものだと思う。自衛官は、いかなる状況であっても、内閣総理大臣の指揮のもと、国民の生命、財産を守る。『日本の最後の砦としての誇り』を胸に、日々、訓練に励んでいる」と締めくくった。また、同氏は講話後、「自衛隊大阪地方協力本部は、小・中学校及び高等学校の『総合的な学習の時間』を支援しながら、学生の方々に職業としての自衛隊及びその活動を少しでも知ってもらうため、日々努めている。今回の『命を守る事に主眼を置いた防災講話』は、学校側との話し合いの下、そのニーズに最大限に応えた形である。今後、デジタルとアナログの両方で講演活動を広く周知していくとともに、学校側に有意義となるように自衛隊を活用していただければ幸いである」とコメントした。
 なお6月30日、同校生徒らは信太山駐屯地を訪れ、実際に大規模災害が起こった際に使われる車両や資機材、装備などを見学した。
平成30年7月豪雨被害(広島市安佐南区)
平成30年7月豪雨被害(広島市安佐南区)


加藤均氏
夢と希望を話す

清交社講演会

力強く話す加藤均氏
力強く話す加藤均氏
 6月22日、ANAクラウンプラザホテル大阪(大阪市北区)において、一般社団法人 清交社(藤 洋作理事長)主催の下、午餐講演会が開催された。主に京阪神地区の財界・政界文化人などで構成される同社は、大正12年の設立以来、社員相互の親睦と啓発を図りながら、社会の発展、繁栄に寄与することを目的として活動を続けている。同会では、「夢と希望 人々のために働く~人生100年を目指して~」と題する演題の中、認定特定非営利活動法人 日越堺友好協会(堺区)の加藤均理事長が講演を行なった。加藤均氏は、地方自治、国際交流、国防の3つのテーマを挙げ、自らの経験に基づいた堺市の行政改革の歴史や諸外国との相互文化理解の重要性、自国防衛に対する心構えなどを述べ、最後に、「父の教えに『一生勉強、一生青春』という言葉があります。困難に立ち向かう時、悩んではいけない。ひたすらに努力することです。今後も、私の夢の下、更なる国際交流に歩を進めるとともに、自国防衛の精神を皆様にご理解していただけるよう、邁進する所存でございます」と締めくくった。

堺まちづくり株式会社
代表取締役に荻田俊昭氏

 6月9日、任期満了に伴い、堺まちづくり株式会社(堺区)の代表取締役に荻田俊昭氏が就任した。
 同社は市民、商業者、企業、公社などの出資により平成29年に設立、平成元年に「堺市中心市街地活性化協議会」の共同設置者となり協議会事務局業務を担う。「博愛ビル活用事業」、「堺市市民交流広場の活用促進事業」などに取り組んでいる。多目的レンタルスペース「サカイエ」の運営も行っている。

社説

人権リスクの感度が問われている日本

海上自衛隊第41代呉地方総監
金沢工業大学虎ノ門大学院 教授

伊 藤 俊 幸

 いま日本は、「人権リスク」への感度が問われています。
 五月十日付のアメリカ税関当局の文書により、今年一月ユニクロのシャツが、ロサンゼルス港で差し止められていたことが明らかになりました。「中国の新疆ウイグル自治区で生産された綿製品は、ウイグル族の人々の強制労働によって生産された疑いがある」として、アメリカは輸入停止措置を発動しているからです。
 今から十年前、国連は本格的に人権問題に取り組み、国連人権理事会は「ビジネスと人権に関する指導原則」をまとめました。この中では、①人権を保護する国家の義務、②人権を尊重する企業の責任、③人権侵害を受けている人の救済措置へのアクセスという三つの柱が掲げられました。特に各企業に対して、人権を尊重する方針を表明し、自社内部のみならず、海外でのサプライチェーン上の「人権リスク」を把握し、対策をとり、情報を開示せよ、と求めたのです。この一連の作業を「人権デューデリジェンス」といいます。
 日本も去年十月、「ビジネスと人権に関する行動計画」を策定しましたが、人権問題の周知・啓発や、企業の取り組みへの期待を示すだけで、そもそも計画策定自体が世界で二十四番目と遅かった上、強制力もないのです。
 先日のG7首脳宣言は、「人権や基本的自由を尊重するよう中国に求める」と改めて新疆ウイグルなどの人権問題に懸念を示しました。既にEUと米英加は、人権侵害に当たるとして、中国当局者らへの制裁を発動しています。しかしG7で唯一「人権侵害制裁法」がない日本は、中国を念頭にした「非難決議」すら今国会で採択できませんでした。
 このままだと日本は「中国に対し、具体的にどのような行動をとるのか」と欧米から求められたり、ユニクロのように日本企業は欧米でビジネスができなくなることも予想されるのです。
 日本は、国内では人権を守ることが当たり前の国ですが、海外の進出先や取引先でも人権問題に目を光らせる必要があるのです。せめて「人権リスク」への対応を義務付ける法律を早急に策定するなど、国際社会の要請に正面から答えることが求められています。