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岸田文雄首相 年頭所感

 新年あけましておめでとうございます。
 昨年は、衆院総選挙において、国民の皆さんから力強い信任を頂きました。心から感謝申し上げます。
 国民の皆さんの期待に応えるため、スピード感を持って取組を進め、昨年の臨時国会では「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」を実現する補正予算を成立させることができました。
 岸田政権にとっての初めての新春を迎え、国民の皆さんとともに新しい時代を切り拓いていくとの決意を新たにしています。各界各層の声に真摯に耳を傾け、信頼と共感をさらに高める1年としていきます。
 新型コロナは、依然として世界的に猛威を振るっており、「オミクロン株」の出現など、予断を許さない状況です。最悪を想定しながら、ワクチン接種、無料検査の拡充、経口治療薬の普及などを進め、予防・検査・早期治療を強化し、社会全体として、新型コロナの脅威を引き下げます。
 新しい資本主義の実現は岸田内閣の最重要政策です。国民お一人おひとりが豊かで、生き生きと暮らせる社会を実現させ、世界、そして時代が直面する挑戦を、我が国が牽引します。
 激動する国際社会の中、現実的な取組を進め、我が国の安全・安心を守り抜く、毅然とした外交・安全保障を進めます。
 そして、自民党の党是である憲法改正も、本年の重要課題です。国民に分かりやすい憲法論議を国会の内外で進め、憲法改正運動を活性化します。
 併せて、自民党が、信頼される国民政党であり続けるために、党改革にも力を入れます。
 本年が、皆さまにとって実り多き一年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。




社説

経済安全保障は成長戦略

元海上自衛隊呉地方総監
金沢工業大学虎ノ門大学院 教授

伊 藤 俊 幸

 新年おめでとうございます。健やかに新春をお迎えのこととお慶び申し上げます。
 さて、昨年も米中対立のなかで、日本は中国とどう向き合っていくべきか問われた一年でした。その観点から、今年の焦点の一つとなるのが「経済安全保障」関連法の整備でしょう。
 昨年十一月十九日、岸田首相は自らを議長とする「経済安全保障推進会議」を立ち上げ、法案準備を急ぐよう関係閣僚に指示しました。同時に有識者会議が設置され、その資料が公開されています。
 「国際情勢は一段と複雑化し、想定を超えるリスクが顕在化し、国民生活や経済に影響する」として、「各国とも産業基盤強化の支援、機微技術の流出簿防止、輸出管理の強化を推進している」と指摘。我が国も「自律性の向上」と「優位性・不可欠性の確保」を図る必要がある、と本法案の必要性を説明しています。
 そして今年通常国会に提出予定の法案は、以下の四つの柱で構成されるようです。
 ①特許の公開制限(イノベーション促進との両立を図りつつ特許を非公開化し、機微な発明の流出を防止する。) ②サプライチェーンの強靭化(国民生活や産業への重大な影響を回避するため、重要物資や原材料のサプライチェーンを強靭化する。) ③先端技術の研究開発支援(官民が連携して技術情報を共有・活用し、重要技術を育成・支援する枠組みを作る。) ④重要インフラの安全確保(基幹インフラ機能の維持などに関して安全性・信頼性を確保する。)
 一方で、米中は「エコノミック・ステイトクラフト」という「経済を武器にした外交戦」をしていますが、今度の法案から観る限り、日本はそこには踏み込まないようにみえます。日本の国防・安全保障を担ってきた人たちが、「期待外れだ」と落胆していると側聞します。
 ただし、日本の経済界にとっては歓迎すべきことなのでしょう。実際、昨年十二月の所信表明演説で岸田首相は、「経済安全保障」を、「八 外交・安全保障」の項目ではなく、「六 新しい資本主義の下での成長」として、官民が協働し大胆な投資を行う、成長戦略の一つの手段として説明されました。日本は、「経済による安全保障」ではなく、食料安全保障と同様、「経済の安全保障」をする、ということなのでしょう。